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仙台大学から世界へ~デフアスリートの挑戦~



今年10月、仙台大学職員の佐々木琢磨選手(平成29年3月体育学部健康福祉学科卒)が、鹿児島国体の陸上・成年男子100メートルに青森県代表として出場。聴覚障害者のアスリートとして初めてトラック種目に出場しました。
令和7年11月の東京で開催されるデフリンピック100メートル2連覇を目指す金メダリストの佐々木選手に、仙台大学での成長過程と今後の展望について語ってもらいました。

仙台大学での挑戦:健常者の世界への第一歩


聾(ろう)の世界から健常者の世界への飛躍には、大きな覚悟が求められます。私にとっても、最初の段階では部活動への集中よりも、新しい環境への適応が最優先事項でした。仙台大学でも聾に対するサポートをしてくれましたが、実際の聾に対する理解がまだ十分ではなく、多くの困難に直面しました。
そのため、私は友人たちに何度も相談し、さまざまな解決策を模索しました。これらの経験が、私の成長における基盤を築き上げました。

トレーニングの深化:仙台大学陸上部部長・名取先生の指導


私の「走り」に対する考え方は、仙台大学陸上部の部長である名取先生のご指導のお陰で根本から変わりました。名取先生のご指導により、私はトレーニングの本質と目的を真に理解し、それを実践することで、デフリンピックで世界一に輝くという顕著な成績を収めることができました。
この成果は、名取先生からのご指導の賜物です。名取先生のご指導の真意を理解し、それを自分のものにすることができたことは、私のアスリートとしての成長にとって計り知れない価値があると思っています。

令和5年度鹿児島国体の出場:青森県代表+デフ陸上界の代表として

写真:鹿児島国体陸上競技・100m予選第1コースで力走する佐々木選手

個人的には、青森県代表として出場することに加え、デフ陸上界の代表としての役割も強く感じています。予選での敗退は悔しい経験でしたが、高いレベルの大会に参加すること自体が、多くのデフ陸上選手やデフスポーツ選手、そしてその関係者の方々にも大きな刺激があったと考えています。
デフスポーツは、健常者のスポーツやパラリンピックのスポーツに比べて、一般的にレベルが低いと見なされがちです。しかし、そのような先入観にとらわれずに、自分がやりたいことを楽しむことの大切さを伝えたかったため、国体に出場できたことは、大きな意味がありました。これからは、さらに強くなって勝利を目指したいです。

2025年デフリンピック:3冠王と世界新記録への挑戦

東京で開催される令和7年のデフリンピックでは、大きな目標があります。それは、100m、200m、400mリレーで金メダルを獲得し、3冠王になることと、世界新記録を樹立することです。特に、100メートル走で10秒21を切ることを目指しています。
これまでの経験と成長を踏まえ、自分自身に新たな挑戦を課したいと考えています。デフリンピックは私にとって特別な舞台であり、ここで最高の成果を出すことが、私のアスリートとしてのキャリアにおいて重要な意味を持っています。3冠王というのは、自分の能力の限界に挑むことを意味し、世界新記録を目指すことは、自分自身をさらに押し上げるモチベーションになっています。毎日、これらの目標を念頭に置き、それに向かって一歩一歩進んでいきたいと思います。 引き続き、応援よろしくお願いします。
 
写真:ピストル音の代わりに光でスタートを知らせるランプ

〈佐々木琢磨選手の主な成績〉
◆2013年 第22回夏季デフリンピック競技/ソフィア大会 200m 2次予選敗退
◆2015年 第8回アジア太平洋ろう者スポーツ大会/台湾大会 100m 優勝
◆2016年 第3回世界デフ陸上競技選手権大会/ブルガリア大会 100m4位
◆2017年 第23回夏季デフリンピック競技/サムスン大会 100m 7位
4×100mR優勝
◆2019年 世界デフ室内陸上競技選手権大会 60m4位
◆2021年 第4回世界デフ陸上競技選手権大会/ポーランド大会 100m 2位
◆2022年 第24回夏季デフリンピック競技/ブラジル大会 100m 優勝
◆2023年 第78回国民体育大会陸上競技 青森県選考会/青森県 100m 優勝
◆2023年 第50回東北総合体育大会陸上競技/岩手県 100m 4位
◆2023年 令和5年(2023年)特別国民体育大会/鹿児島県 100m予選敗退
 
聴覚障害学生の授業サポートをしているノートテイカーのみなさんが、
手話での応援を教えてくれました!